
個人事業を法人化したい
2025年10月22日 09:50
個人事業主が法人化(法人成り)する際の手続きは、大きく「法人設立の手続き」「個人事業の廃止と資産の引き継ぎ」「設立後の各種届出・手続き」の3つの段階に分かれます。
以下に、一般的な株式会社を設立する場合の手続きの流れを文章でご説明します。
1. 法人設立の手続き(登記完了まで)
法人格を取得し、会社として成立させるための中心的な手続きです。
ステップ1:会社の基本事項の決定
まず、会社の根本となる以下の事項を決定します。
商号(会社名):使用できる文字などに制限があるため、事前に確認が必要です。
事業目的:今後行う事業を具体的に決めます。許認可が必要な事業の場合は、この目的の記載が重要になります。
本店所在地:会社の本社の住所を決めます。
資本金の額:いくら出資するかを決めます(現在は1円から設立可能ですが、事業内容に応じて信用度を考慮します)。
役員構成:代表取締役、取締役などを誰にするか、任期などを決めます。
事業年度(決算期):決算を行う月を決めます。
ステップ2:定款の作成と認証
定款の作成:ステップ1で決めた基本事項を「定款(ていかん)」という会社の規則にまとめます。
定款の認証:作成した定款を、本店所在地を管轄する法務局所属の公証役場で公証人の認証を受けます。(※合同会社の場合はこの認証は不要です。)
ステップ3:資本金の払い込み
定款認証が完了した後、発起人(出資者)が定めた資本金の全額を、発起人代表の個人銀行口座に払い込みます。この入金の事実を証明する書類(払込証明書)を作成します。
ステップ4:設立の登記申請
ステップ1〜3で作成・収集した必要書類を揃え、本店所在地を管轄する法務局に「設立登記」を申請します。
この手続きは司法書士の独占業務であり、ご自身で行うか、司法書士に依頼するのが一般的です。
法務局が申請を受理し、不備がなければ数日から1週間程度で登記が完了し、会社が正式に成立します。
2. 設立後の各種届出と手続き
登記完了をもって会社は成立しますが、事業を始めるには様々な行政機関への届出が必要です。
① 税務署・自治体への届出
法人設立届出書:税務署、都道府県税事務所、市区町村役場に提出します。
青色申告の承認申請書:税金上の優遇を受けるために提出します。
給与支払事務所等の開設届出書:役員報酬や従業員に給与を支払う場合に提出します。
(その他):棚卸資産の評価方法や減価償却資産の償却方法の届出など、必要に応じて提出します。
② 社会保険・労働保険の手続き
社会保険の加入:会社は、原則として健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられます。年金事務所で新規適用届などの手続きを行います。
労働保険の加入:従業員を雇用する場合、労働基準監督署(労災保険)とハローワーク(雇用保険)で手続きを行います。
③ 金融機関・事業関連の手続き
法人口座の開設:法人の名義で銀行口座を開設します。(設立後の登記事項証明書などが必要です。)
許認可の取得:事業内容に応じて、飲食店営業許可、建設業許可など、各行政庁に許認可を申請します。(この手続きは行政書士が得意とする分野です。)
3. 個人事業の廃業と資産の引継ぎ
法人化は、個人事業を廃業し、新たに法人として事業を始めることを意味します。
個人事業の廃業届の提出:個人事業を廃止した日から1ヶ月以内(目安)に、税務署に廃業届を提出します。
資産・負債の移行:個人事業で使っていた資産(車両、備品など)や負債を、公正な価格で法人へ引き継ぐ手続きを行います。
名義変更:オフィスや店舗の賃貸契約、各種サービス契約などの名義を「個人」から「法人」に変更します。
これらの手続きは非常に多岐にわたり、法律や税務の知識が必要となるため、多くの場合、司法書士、税理士、行政書士などの専門家と連携して進められます。
<お問い合わせ>
富森行政書士事務所
行政書士 富森翔太
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